背骨はすべてを語る
整体では、背骨、骨盤に対する観察と、その調整を基本としています。 体を整えていく上で、背骨の観察と調整はとても重要です。とくに骨盤の開閉、仙骨、胸骨5番あたりは、どのような症状でも大切に観察していきます。
心と体の機能の滞りは、全ての症状が背骨(脊椎・せきつい)に現れます。手でも足でも内臓でも、その疲れや障害は関連する背骨に影響がいきます。
つながりのある背骨の周囲の筋肉がこわばって弾力を失っていくのです。
心と体は密接に関連していますが骨盤や頸椎が弾力を失っている方々は心にも体にも不調が多い。
そして喜怒哀楽を含めた感情やトラウマなども、みな背骨に現れます。
脊椎は、頚が7個、背中が12個、腰が5個、全部で24個の椎骨が連結してできています。
さらに、その下に仙骨 ・ 尾骨と続きます。そして、体のどの部分の疲労でも異常でも、関連する脊椎のどこかにその現象が明確に出ています。
逆に、その背骨の周囲のこわばりを刺激し調整することで、体のあちらこちらの働きを(内臓・ホルモン・自律神経の働きを含めて)正常化することができます。整体で背骨の観察と、背骨と周囲の筋肉への刺激を重視するのはこのためです
眼なら第2頸椎、肝臓なら第9胸椎、卵巣なら第11胸椎と体のつながりがわかっているので、体表から内臓の働きを調整できるのです。
疲労の蓄積や内臓の異常の反応として、背骨の周囲の筋肉に硬直(凝り・張り)や硬結(※)、萎縮、弛緩、圧痛、鈍り(麻痺)などが現れます。
体が何らかの原因で麻痺しているほど、厄介なことはありません。
なぜなら痛みや違和感を感じない体は回復するキッカケを失うことになるからです。
ある意味では「病むことは力」なのです。
そして、これらの異常は慢性化したものほど深部に隠れていきます。
それは、表面的に背骨の両脇の筋肉を押したり揉んだりしても解消されるものではありません。
ある特殊な角度で型に添って押さえなければ、その深部の異常にはふれないのです。
そして力ではなく、「気」を浸透させるように押さえていきます。 「気」を通していくからこそ、深部が変化してくるのです。
変化には一定の温かい環境が必要です。整体では温めることが大切なのは主にそれが理由だといっても過言ではないでしょう。
整体では、「背骨は真っ直ぐなら良い」 とは考えません。
一人一人顔の形が違うように、背骨の並びにも個性があります。その個性を尊重した上で、背骨が自然な弾力と可動性を保つように調整していきます。
(背骨の個性を無視して、誰の体でも 「骨格模型のように真っ直ぐにしよう」 とすると、かえって体をおかしくしてしまうことになります)
自分らしさというのは、体の声を聴いて回復していく心身の状況を体験していくことです。
背骨に弾力がある「ゆる~い」柔軟性を伴った体は適応能力が高いのです。
その柔軟性を大切にするためには余計な力を極力なくすことです。
整体は、ある意味足し算ではなくて引き算で、余分なものを極力なくしてシンプルに整えるのです。
元来、人間の心身には私たちが考えている以上の回復力や生命現象として生きる力が備わっています。
この力を発揮できるようにリラックスして自分で邪魔しないようにすることが大事です。
※硬結 - 大は小豆粒くらいから小は楊枝の先ほどの大きさの、筋肉の中にできる小さな硬いしこりのようなもの。
小さくて硬く冷たいほど異常が根深いことを示す。体が良くなるにしたがい、だんだんと大きく柔らかくなり消失する。