整体から見た「入浴の基本」セルフケアとして
整体から見た「入浴の基本」〜体を弛め、引き締めるお風呂の入り方〜
朝晩が冷える季節になってきましたね。
こんな時期こそ、お風呂の入り方を見直してみましょう。
野口整体の観点からすると、入浴の一番の目的は「体を洗うこと」ではなく、お湯のあたたかさの刺激で体を弛め、働きを高めることにあります。
うまく弛むことで、体の中の余分なエネルギーや疲労素、毒素が抜けていくのです。
ですから、体に異常があるときほど、実はお風呂に入ることが大切なんですね。
整体的お風呂の入り方 〜体の声を聞く湯加減〜
お風呂に入っても、なかなか温まらないことってありますよね。
夏は一日中エアコンの部屋にいたとき、冬は体の芯まで冷えているときなど、いくらお湯を熱くしてもポカポカしにくいものです。かといって長く浸かるとのぼせてしまいます。
そんなときは「間をおいて温める」のがコツです。
まずは適温のお湯に浸かって、「あ、温まってきたな」と感じたら一度上がります。
足だけ湯に残してもかまいません。冬なら、体を乾いたタオルで拭いて肩にタオルを掛けておくと冷えを防げます。
少し休んでから、再びお湯に入る。この二回目は短くて大丈夫。30秒でも充分です。
お湯が冷めないように、少し温度を上げておくのもいいでしょう。
特に冬に足が冷えているときは、あらかじめ足湯や膝湯をしておくと、お風呂で全身がぐっと温まりやすくなります。温まった部分は感度が上がり、次に熱を受け取りやすくなるんですね。
整体的におすすめの入浴時間は「朝」です。
朝風呂は体を活性化し、冷えた体を内側から温めてくれます。特に秋冬は朝の入浴が一日のエネルギーを整えてくれます。
夜に入るのも悪くはありませんが、寝る直前は避けましょう。
お風呂上がりの体は熱を放出して冷ます方向に働くため、そのまま寝てしまうと体が冷えてしまいます。少なくとも寝る1時間前までに上がるのが理想です。
高齢の方は、昼間の暖かい時間に入るのもおすすめです。髪を洗うのもその時間帯が負担が少なく安心です。
大切なのは、「こうしなければ」と頭で決めつけず、体の声を聞くこと。
気持ちよいと感じる温度・時間が、今のあなたに合った「適温・適時」です。
お風呂も、食事も、睡眠も、「ちょうどいい」と感じるバランスを見つけることが、整体的な健康につながります。
入浴は、毎日の中で体の感覚を取り戻す絶好のチャンス。
今日のお湯の感触、皮膚の赤み、上がるタイミング――
それらを丁寧に感じながら、お風呂を“体と対話する時間”にしてみてくださいね。
お湯の温度は体の状態を映す鏡
一般的に、42℃のお湯で体は「引き締まる」反応を起こします。
敏感な人なら39℃くらいがちょうど良いと感じるかもしれません。
この42℃を境に、
- 「42℃が熱く感じる」=正常
- 「42℃がぬるくて45℃が快い」=体が鈍っている
- 「40℃でも熱く感じる」=体が過敏になっている
といった具合に、お湯の感じ方で体調を知ることができるのです。
つまり、「熱いお湯が好き」という人は、それくらい強い刺激でやっと弛むような疲れた体ということ。
反対に「ぬるいお湯が気持ちいい」と感じるのは、過敏になっている証拠です。
今の体に合った温度を選ぶことが、なにより大切です。
皮膚の赤みで整う
入浴後、皮膚がしっかり赤くなることも大事なポイントです。
感覚的に「気持ちよかった」と思っても、赤くならない部分があるなら、そこは十分に温まっていない証拠。
入浴後に鏡などで全身を見て、赤くならない部分は軽くこすって刺激を加えると良いでしょう。
- 片足だけ赤くならない → 風邪の初期
- 両膝下が赤くならない → 消化器の不調(食べすぎ・飲みすぎなど)
こうしたときは、赤くならないところをもう一度、少し熱めのお湯で2〜3分温めてあげるだけで、体調の変化を防げます。
これが、足湯・脚湯などの部分温法の原点なんですね。
顔から入るのが整体の入浴ポイント
お風呂に入るときは、いきなり全身を入れるのではなく、まず顔から温めるのが整体の基本。
顔が冷たいまま入ると、脳貧血を起こすこともあるため、入浴前にお湯で顔を洗い、温タオルで少し温めておくと安全です。
また、胸まで浸かるときに肘を湯船のヘリに乗せるのもおすすめ。
肘を心臓より上にして入ることで、急激な心臓の収縮を防ぎ、心臓に負担をかけません。
上がるタイミングを見極める
お湯に入ったら、内股にそっと触れて体の変化を感じてみましょう。
最初はお湯の刺激でキュッと引き締まり、少しするとフワッと弛みます。
さらに温まっていくと、今度はまたスーッと引き締まってくる。
この「再び引き締まり始めたとき」こそ、上がるベストタイミングです。
上がる頃には全身が艶々と赤くなり、皮膚はきめ細かく水を弾くようになります。
これが、弛みと引き締まりのバランスが整った状態。
慣れないうちは、「ゆっくり20呼吸ほど」浸かってから出る、という目安でもOKです。
思ったより短時間でちょうどよいことに気づくでしょう。
入浴は「体を温める」のではなく「発熱を促す」
お風呂で温まるというのは、お湯が体を温めてくれるからではありません。
お湯の刺激で体が反応し、自ら発熱を始めるから温まるのです。
ですから、「もう少し温まりたいかな?」くらいのタイミングで上がるのがコツ。
体が自分の力で温まり始める、いわば「本当のあたたまり方」です。
反対に、顔から汗が出るほど長く入ってしまうと、体が弛みすぎて冷えやすくなります。
温まりすぎには注意しましょう。
濡れたままで動かないこと
最も避けたいのは、濡れた体のままで動くこと。
子どもがお風呂場で遊ぶときなど、入る前の裸の状態で遊ぶのは平気ですが、
濡れたまま動くと、あっという間に体を冷やしてしまいます。
上がった後も同じで、よく体を拭いてから動くこと。
そして、お風呂上がりに扇風機やクーラーに直接あたるのもNG。
風にあたると体が硬張り、マヒ体質を作るもとになります。
自然な風でうちわを使うくらいがちょうど良いでしょう。
まとめ
- 入浴の目的は「体を弛めて働きを高める」こと
- お湯の温度は42℃を基準に、感じ方で体調を知る
- 皮膚の赤みを観察して、温まり不足の部分を補う
- 顔から入り、内股の感覚で上がるタイミングを見極める
- 「もう少し温まりたい」くらいで上がるのが理想
- 濡れたまま動かない・風に直接あたらない
入浴は、単なる「リラックス」ではなく、体の知恵を取り戻すための養生法です。
その日の体調に合わせて、湯の温度と時間を工夫してみてくださいね。